「スタバのコーヒー豆って、正直どうなの?」 インターネットを眺めると、「スタバのコーヒーは焦げてるだけで、やばい(=美味しくない)」という辛口な意見もあれば、「今日の新作フラペチーノ、やばい(=最高に美味しい)!」という絶賛の声も溢れています。
世界最大のコーヒーチェーンでありながら、なぜこれほどまでに評価が二極化するのでしょうか。その中心にある「やばい」という言葉の、本当の意味とは。
こんにちは。「宅カフェ向上委員会」委員長です。
この記事は、そんなスターバックスのコーヒーが持つ、複雑で魅力的な評判の真相に迫る、徹底検証レポートです。なぜ一部のコーヒー愛好家は、スターバックスを批判的に見るのか。一方で、なぜこれほどまでに多くの人々が、スターバックスのカップを手に、至福の表情を浮かべるのか。
その両面を公平に分析し、定番のコーヒー豆を実際にレビューした上で、あなたにとってスターバックスが「最高の選択肢」となり得るのかを、明らかにしていきます。
ネガティブな意味で「やばい(=美味しくない)」と言われる3つの理由
まず、なぜ一部の、特にスペシャルティコーヒーを愛好する層から、スターバックスのコーヒーが批判的な目で見られることがあるのか。その背景にある、3つの主な理由を解説します。
理由1:特徴的な「深煎り」のスタイル
スターバックスのコーヒーの味わいを決定づける最大の要素、それは**「深煎り(ダークロースト)」**への強いこだわりにあります。創業当初から、ミルクやシロップ、豊かなフレーバーを加えても、コーヒーの風味が負けないように、しっかりとした苦味とコクを持つ深煎りの豆をメインに据えてきました。
この「スタバロースト」とも呼ばれる焙煎スタイルは、豆の油分が表面に滲み出るほど深く煎り上げるため、スモーキーで、キャラメルのような濃厚な甘苦い風味を生み出します。
しかし、このスタイルは、近年のスペシャルティコーヒーの潮流である「豆本来の果実味や酸味を活かす、浅煎り」とは、全く逆の方向を向いています。そのため、浅煎りコーヒーの繊細な風味を好む人からすると、スタバのコーヒーは「個性がなく、ただ焦げたような苦い味」と感じられてしまうのです。
理由2:スペシャルティコーヒーとの「評価軸」の違い
「やばい(美味しくない)」という評価は、多くの場合、比較対象があるからこそ生まれます。その比較対象が、街の自家焙煎店などで提供される「サードウェーブコーヒー」です。
サードウェーブコーヒーは、生産国や農園、精製方法といった「豆の素材(テロワール)」が持つ、唯一無二の個性を最大限に尊重します。エチオピアの華やかな果実味、ケニアのジューシーな酸味、そういった繊細なフレーバーこそが「良いコーヒー」の基準となります。
一方、スターバックスが目指すのは「いつ、どこで飲んでも、決して裏切らない、安定したスターバックスの味」。ブレンド技術を駆使し、世界中の店舗で同じ品質を提供することに、最大の価値を置いています。
つまり、「一点物の芸術品」と「最高品質の工業製品」のように、両者が目指すゴール、つまり「美味しさの評価軸」が根本的に異なるのです。芸術品を評価する目で工業製品を見れば、物足りなく感じるのは当然かもしれません。
理由3:価格設定に対する見方
スターバックスのコーヒー豆は、250gで1,300円~1,600円程度の価格帯が中心です。これは、スーパーで売られている豆よりは高く、こだわりの自家焙煎店の豆と同じか、少し安いくらいの価格設定です。
この価格に対し、「同じ値段を出すなら、焙煎したての、もっと個性的なスペシャルティコーヒーが買える」という意見が、コーヒー愛好家から出ることもあります。これは、コーヒーに「鮮度」や「希少性」という価値を重んじる人々にとって、ごく自然な意見と言えるでしょう。
ポジティブな意味で「やばい(=最高だ)」と言われる3つの理由
では次に、なぜスターバックスが世界中で圧倒的な支持を得ているのか。その「やばい(=最高)」と言われる理由を見ていきましょう。
理由1:徹底された「品質と一貫性」への信頼
世界中に3万店以上を展開しながら、東京で飲むラテも、ニューヨークで飲むラテも、驚くほど同じ味がする。この「グローバルな品質の一貫性」は、並大抵の企業努力では実現できません。スターバックスは、「C.A.F.E.プラクティス」という独自の倫理的な調達基準を設け、生産者との公正な取引を行いながら、高品質なアラビカ種コーヒー豆だけを買い付けています。この徹底した品質管理と、いつ訪れても変わらない味への絶対的な信頼感が、多くの人々を惹きつける最大の理由です。
理由2:ミルクやフードとの「完璧な相性」
スターバックスの真価は、ブラックコーヒー単体ではなく、ラテやフラペチーノ®︎、あるいはスコーンやケーキといったフードと一緒に楽しむことで、最大限に発揮されます。批判の対象となりがちな「深煎りの苦味」は、たっぷりのミルクや甘いシロップ、濃厚なバターの風味と合わさった時、それらを支え、全体の味を引き締める、最高のパートナーへと変わるのです。スターバックスは、コーヒー豆を売っているのではなく、「コーヒーのある豊かな時間」という、完璧に計算された体験を提供しているのです。
理由3:「ブランド体験」と「アクセスの良さ」
人々がスターバックスに求めるのは、コーヒーの味だけではありません。洗練された店舗デザイン、心地よい音楽、親しみやすいバリスタとの会話、そして無料Wi-Fi。自宅でも職場でもない、「第三の場所(サードプレイス)」としての快適な空間。この強力なブランド体験こそが、スターバックスの唯一無二の価値です。「あの空間で、いつもの一杯を飲む」こと自体が、多くの人にとっての幸せなのです。そして、その幸せが、日本の主要な駅や街角の、どこででも手に入る。この圧倒的なアクセスの良さも、他の専門店にはない大きな強みです。
【定番豆レビュー】結局どれが美味しい?委員長が選ぶおすすめ3選
さて、両面の評判を理解した上で、実際に販売されている定番のコーヒー豆をレビューします。あなたにとっての「美味しいスタバ」は、この中にきっとあるはずです。
パイクプレイス® ロースト – 迷ったらコレ!究極の「ふつうに美味しい」
スターバックスの原点である、シアトルのパイクプレイス市場の名を冠したブレンド。まさに、スターバックスの「ど真ん中」の味わいです。ローストレベルは中程度の「ミディアムロースト」。ココアや、炒ったナッツのような、丸みのある香ばしい風味が特徴で、酸味と苦味のバランスが非常に良いです。突出した個性はありませんが、誰もが「ふつうに、美味しい」と感じられる、究極の安定感。毎日飲むコーヒーとして、あるいはギフトとして、最も失敗のない選択です。
エスプレッソ ロースト – おうちラテを格上げする、力強い相棒
お店で提供されるラテやキャラメルマキアートの、全てのベースとなっているのが、このエスプレッソ ローストです。焙煎は「ダークロースト」。力強い苦味の中に、カラメルのような濃厚でリッチな甘みが感じられます。ブラックで飲むには強いと感じるかもしれませんが、ミルクと合わせると、その真価が爆発します。お店で飲む、あの本格的なラテの味を自宅で再現したいなら、選ぶべきは間違いなくこの豆です。

ベランダ ブレンド® – スタバの「優しさ」担当。軽やかな一杯
「スタバは深煎りばかり」と思っている方にこそ、試していただきたいのがこのブレンド。ローストレベルは最も軽い「ブロンドロースト」です。ソフトなココアと、軽く煎ったナッツのような、穏やかで優しい風味が特徴。苦味は非常に少なく、後味もスッキリとしています。リラックスしたい午後や、軽い飲み口のコーヒーが好きな方に、ぜひ一度試していただきたい、スターバックスの「優しさ」担当です。

結論:スターバックスのコーヒー豆は、どんな人になら「買い」か?
スターバックスのコーヒーは、「良い / 悪い」の二元論で語るべきものではなく、**「特定の目的のために、最適化されたスタイル」**と理解するのが、最も正しい捉え方です。
こんな人には、最高の選択肢になります
- スターバックスというブランドや、お店の雰囲気が好きな方
- 主にカフェラテや、シロップを入れたアレンジコーヒーを楽しむ方
- コーヒーに、複雑な酸味よりも、安定した苦味とコクを求める方
- いつ、どこで買っても「知っている味」が手に入る、という安心感を重視する方
こんな人には、他の選択肢が良いかもしれません
- 浅煎りの、フルーティーで華やかな酸味を愛する方
- 生産国や農園ごとの、繊細な味の違いを探求したい方
- 「焙煎したて」の、鮮度を何よりも重視する方
まとめ:「やばい」の理由は、あなたがコーヒーに何を求めるか、その中にある
スターバックスのコーヒー豆が「やばい」と言われる理由。それは、評価する人々の「コーヒーに求める価値観」が、全く異なるからです。
最先端のスペシャルティコーヒーを追い求める旅も、この上なく楽しいものです。しかし、私たちの日常に、いつでも変わらない笑顔で寄り添ってくれるスターバックスという存在もまた、同じように尊く、価値のあるものです。
どちらが優れているか、ではありません。大切なのは、今日のあなたが、どんな一杯を求めているか。 その日の気分や目的に合わせて、様々なコーヒーの世界を自由に行き来することこそ、「宅カフェ向上委員会」が目指す、最も豊かで、幸せなコーヒーライフなのです。